白井明大 有賀一広「日本の七十二候を楽しむ -旧暦のある暮らし-」を読む

千住に建っている俳聖松尾芭蕉像 暦には太陽暦・太陰暦・太陽太陰暦の3つがある。太陽暦は地球が太陽を回る約365日を1年とし、それから月を決めるもので、太陰暦は月が地球を回る約29日を1か月としてそれから1年を決めるものである。太陽太陰暦は1か月を約29日として、1年を平均して約365日にするものである。
 太陽暦と太陰暦ではどちらがよいというわけではない。太陽を中心とするか、月を中心とするかである。太陽暦では月と季節がつねに一致するが、月の形と日にちがずれる。逆に、太陰暦では、月と季節がずれるが、月の形と日にちがつねに一致する。
 現在では、日本ばかりでなく世界のほとんどの国が太陽暦を採用している。日本は、昔から太陽暦を採用していたわけではない。江戸時代まで、正確にいうと明治5年12月までは、太陽太陰暦を採用していた。
 太陽太陰暦では、1か月は29日ないし30日であり、1年を12か月とすると、1年約365日にすることはできない。そのため、閏年を設けて、ある年を13か月にするのである。そして、1年が平均して約365日になるようにする。閏年の場合、ある月が2か月続くことになる。たとえば、八月が2か月続くときは、八月・閏八月となる。閏年は平均して、19年に7回ある。
 太陽太陰暦では、月の形と日にちがつねに一致する。一日(ついたち)はかならず新月で、十五日はかならず満月になる。昔の人は、月の形を見ると、今日は何日かがすぐにわかったのである。だが月と季節が少しずれる。太陽暦では八月は1年のうちでつねに最も暑い月になるのであるが、太陽太陰暦では最も暑いといわれている六月でも、つねに最も暑いというわけではない。
 そこで、太陽太陰暦では、季節を知る上で、節気なるものを考える。地球が太陽を回る約365日を24で割った長さを節気とするのである。こうすると節気は動かないので、人々は節気を知ることで、季節を感じることができた。節気とは、季節を知る時計のようなもので、昔の人にとってはなくてはならないものであった。24節気は以下の通りである。
立春(新暦ではおよそ2月4日〜18日)雨水(2月19日〜3月4日)啓蟄(3月5日〜19日)
春分(3月20日〜4月3日) 清明(4月4日〜19日) 穀雨(4月20日〜5月4日)
立夏(5月5日〜5月20日) 小満(5月21日〜6月4日) 芒種(6月5日〜6月20日)
夏至(6月21日〜7月6日)小暑(7月7日〜7月21日) 大暑(7月22日〜8月6日)
立秋(8月7日〜8月22日) 処暑(8月23日〜9月6日) 白露(9月7日〜9月21日)
秋分(9月22日〜10月7日) 寒露(10月8日〜10月22日) 霜降(10月23日〜11月6日)
立冬(11月7日〜11月21日) 小雪(11月22日〜12月6日)大雪(12月7日〜12月20日)
冬至(12月21日〜1月4日) 小寒(1月5日〜1月19日) 大寒(1月20日〜2月3日)
 
 白井明大の「日本の七十二候−旧暦のある暮らし−」は節気についてわかりやすく書かれたものである。素朴なタッチの挿絵が豊富に描かれていて、心が和む本である。昔から、日本人がいかに自然とつながっていたかがよくわかる。
 1つの節気は約15日間であるが、さらに節気は3等分され、その1つ1つを候という。1つの節は初候・次候・末候と分かれる。1年は72の候に分かれるわけである。候にもそれぞれ名前がついているが、その名前がすこぶるユニークである。立春の初候を「東風凍を解く(とうふうこおりをとく)」という。
 昔の人は自然に対して敏感で、5日間の時間の流れで自然の移ろいを微かに感じとったのである。
 現代に生きる私たちは、微妙な自然の移ろいなどを感じることは、めったにない。夜は新月や満月に関係なく、街は明るいし、養殖・促成栽培・輸入で、野菜・魚はいつでも食べられる。旬という言葉が昔ほど使われない。
 この本を読むと、日本人と自然とのつながりの強さをしみじみと感じる。また、長年、不思議に思っていたことが氷解した。それはおはぎとぼた餅の違いである。秋分の日にお供えするおはぎは、春にはぼた餅と呼ばれるとのこと。2つは同じものだったのだ。ただ、昔は、秋に収穫した小豆をそのままにつぶあんにしたものをおはぎ、冬を越して固くなった小豆をこしあんにしたものをぼた餅といったものらしい。
 この本には、野菜・魚介・野鳥・行事のことが候ごとに、簡潔に、情感漂わせて書かれている。

 「日本の七十二候−旧暦のある暮らし−」はとてもためになる本である。ふと立ち止まって、この本に目を通すと、心が洗われること請け合いである。 

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川崎宿に建っている俳聖松尾芭蕉の句碑 写真上は、千住大橋に建っている俳聖松尾芭蕉の像です。千住は、奥の細道への旅立ちの地であり矢立初の句「行春や 鳥啼き魚の 目に泪」の句が残されています。
 写真下は、旧川崎宿に建っている俳聖松尾芭蕉の句碑です。案内板には次のように
< 俳聖松尾芭蕉は元禄七(1694)年五月、江戸深川の庵(いおり)をたち、郷里、伊賀(現三重県)への帰途川崎宿に立ち寄り、門弟たちとの惜別の思いをこの句碑にある
 麦の穂を たよりにつかむ 別れかな
の句にたくしました。
 芭蕉は、「さび」「しおり」「ほそみ」「かろみ」の句風、すなわち蕉風(しょうふう)を確立し、同じ年の10月大坂で、
 旅に病んで 夢は枯野を かけめぐる
という辞世の句をのこし、51歳の生涯をとじました。・・・>と書いてありました。

日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―
(2012/02/10)
白井 明大

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まとめ【白井明大 有賀一広「】

 暦には太陽暦・太陰暦・太陽太陰暦の3つがある。太陽暦は地球が太陽を回る約365日を1年とし、それから月